column 19


特別な存在(その1)




















ホージーの体調が思わしくなくなって以降、約1年半もの長い間、
このコラムを更新できずにいました。
自分の考えや思いを言葉にするだけの気持ちの余裕がなく、
また、なかなかモチベーションも上がりませんでした。
長いブランクを作ってしまいましたが、
また少しずつ、いろんなことについて綴っていこうと思っています。
そしてとりあえず、今回はこのことについて書かざるを得ません。
それは、突然やってきたホージーとの別れのことです。
自分の気持ちを整理するという意味でも、
この話は外せないと思っています。

きっと多くの人が、ネコとの暮しの中で、
いつか訪れるであろう愛猫との別れを頭では理解しながらも、
心では否定しているのではないでしょうか?
まるでネコとの暮しが永遠であるかのように...。
僕もかつてそうでしたし、実際にそう感じるくらい
ネコとの暮しが、自分たちにとって
当たり前のものになっていたんだと思います。
しかし、人と同様に、出会いがあれば必ず別れもやって来ます。
そして、自分に事故や病気での不幸がない限り、
長生きをしてもほぼ20年というネコを看取る日が、
必ずやって来るのです。
そのことを頭では理解しながらも、
心の上ではどうしても信じられませんでした。
また、イメージすることすら避けていたように思います。
ズルいくらいに、無条件に可愛くてか弱かった仔猫が、
やがて大人の猫になった時、
この先、当然ながら徐々に老いてゆくんだなぁということを意識し、
いつしか、時々、漠然とですが、
" その日 " をすごく恐れるようになっていました。
ホージーがいない...、
いなくなった日常というのがどんなものなのか、
その時の自分がどういう状態なのか、想像すること自体が難しく、
その一方で、不安でいたたまれない気持ちや、
切なさと苦しさで胸がいっぱいになり、
こんな気持ちにまでさせるこの小さな生き物のその存在の大きさに、
いつもいつも驚きと共に感謝の気持ちを抱いていました。

2005年春、誕生月の定期検診で見られた血液検査の不安な数値。
そして、時々見せるどことなく元気のない姿。
血液検査の不安な数値のその原因が掴めないいままの状態は、
8歳を迎え、これからシニアの域に入っていくという年齢だけに、
心配な状況ではありましたが、
重篤な状態ではないとのドクターの見解もあって、一過性のもので
改善されるだろうと、当初は楽観的に考えていました。
しかしながら、現実とは非情にも冷淡なもので、
そんな気持ちが吹き飛び、一気に絶望感を抱かせる事態になりました。

...約半年後の11月15日、
「LGLリンパ腫」「余命、長くても数ヶ月...。」
何度となく検査で訪れていた東大医療センターの診察室で、
何もかもがフリーズしたかのような
大きなショックを受ける言葉でした。
本当に、徐々にドクターの声が遠のいていき、
やがて何も聞こえなくなりました。
...ドクターから余命宣告を受ける家族。
まさに、映画やドラマの演出でよく見かけるシーンと同じ状況になり、
実際にこういう感覚になるんだなぁとその時に身をもって
実感した次第です。
それからしばらくの間、全身の力が抜け、とても車の運転などできない
状態でした。
その後の待合室でのそんな我々の様子を見てなのか、
若いドクターが涙を拭いながら近づいてきて、
今後についての相談をしてくれたことを覚えています。

何とか自宅に戻った我々は、キャリーバッグから出て、
いつもと同じようにそこにいるホージーを見て、たまらなく切なくなり、
感情を抑えることができませんでした。
胸元に抱え上げて強く抱きしめると、それまで我慢していた何かが外れ、
大きな声で泣いてしまいました。
そんな、まるで子供のように嗚咽する僕をじっと見つめていた
ホージーの優しい目が忘れられません。

その後、悩み抜いた結果、我々はステロイド剤を飲ませることを止め、
サプリメントとレメディーで
ホージーの自然治癒力を信じることにしました。
このコは特別かも知れない。
本当に奇跡を起こしてくれるかも知れない。
当初、僕は心からそう思っていました。自分に暗示をかけるように...。


                               Jan. 2007




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